「……どうも」


「どーも!!どうもどうも!!」


「………」



返事を返されたことが、うれしい。

なにか1ミリでもきっかけがあるたびに、わたしは蘭 琥珀というクラスメイトへ声をかけた。



「こ、琥珀くんも楽器演奏したりするの?」


「…まあ」


「俺もねっ、するよ!ピアニカとかリコーダーとかね!」


「………」



ぶはっ!!と、なぜか琥珀くんじゃない男たちが吹き出す。


とくにあいつ、ムツミ。

「ここバンドコースだぜ!?」と、腹を抱えてまで笑っていた。



「琥珀くんの髪、すごい綺麗だよね!銀髪マッシュって言うのかな?月みたい!」


「…いや」


「お、俺も染めてみようかな!あははっ」



それにしても会話が思うように続かない…。

ほとんど彼の二つ返事で終了を遂げてしまう、この絶望感。


頑張って広げようとしても空回り、また空回りの繰り返しだ。


ただわたしのことを不良たちに絡まれていた数ヶ月前の女子高生だとは気づいていないらしく。

それがちょっとだけホッとしたような、落胆したような…。