そこに立っていた、まさかの銀色マスク。

コハク、と呼ばれた男の子は、わたしを一瞬だけチラリと見てから興味なさげに戻す。



「おいアララギ、どうした?」


「…どうしたって、僕は朝のホームルームに間に合ったらダメなんですか」


「いや、あってんだけどよ…」



蘭 琥珀(あららぎ こはく)。


初めてフルネームで揃ったクラスメイトの名前。

あの日着ていたパーカーを今日は着ていない理由は、誰かにあげてしまったからだろうか。



「あっ、あの…!」


「あ、センセ。これ昨日までに提出するべきだったプリント」



わたしの呼びかけを気にすることなくスタスタと通りすぎるシトラスもまた、あの日と同じ。

ここで出会えてしまうとは、なんたる必然。



「で、お前の席だけどなカンナ。アララギの隣がちょうど空いてんだが───、おーい、聞いてんのか?」


「……2回目の…、かみさま……」


「…ムツミ、ちょっとこいつを連れてってやってくれ」


「はあ?なんで俺だよ?」