父、遠い目。


わたしは人見知りをするほうではなく、浅く広くな知り合いはいっぱい居るけれど、昔から深く狭くな友達は案外片手ほどもいない。

でも必ず優しい子に恵まれて、高校1年生の冬休みになった今も充実した日々を送っていた。



「「「お願いします!!!」」」


「はえ?」



すると、耐えきれなくなった家族たちはまた頭を深く深く下げては声を揃えてきた。



「「「どうか郡(こおり)家の窮地を救ってください……!!!」」」



それはそれは聞き慣れない言葉。

今までのびのびと一人っ子で育ってきたわたしは、あまり足りない思いというものをしたことがなくて。


“窮地”という言葉も、言われたところで首を傾げてしまう。



「ええっ、もしかしてお父さんの会社が倒産しちゃった、とか…?」


「……似てるかもなあ」


「えっ」


「おじいちゃんが高校の理事長をしているのはカンナも知ってるだろう?」


「そうだっけ?」


「……知っておいてくれ」