こんなにも自分の気持ちを言える奴だったっけ。

まっすぐ見すえて、もう迷子になった子猫のような目だってしていない。


その瞳には確かな覚悟と目標、目指すべき何かがあるように見えた。



「…カンナにはやらせないよ」



悪いけど俺だって独占欲のかたまりだから。


去年の文化祭は特別。

そうするしかなかった、だから許しただけで。


俺が鋭い言葉と一緒に同じ眼差しを向けても、琥珀は怯む素振りすら見せなかった。



「ボーカルは、───僕がやる」



どんな風の吹き回しだ。

なにがあったんだ、なにがお前を変えたんだ。

だれがお前を変えてくれたんだ。


ムツミも戸惑っているようで、会話権はすべて俺に委ねていた。



「……へえ。ベースボーカルね、格好いいじゃん」



うんうん、お前ならできるよ。
お前ならひとりでもできる。

作詞作曲して編曲して、それをひとりで演奏して歌うんだ。