「…恨めるわけ、ない…、あいつの不器用さだって、孤独だって、俺がぜんぶ知ってんだから…」


「…うん」


「だから……本当はそれでもないんだ…、俺が後悔してるの、そこじゃない…」


「…じゃあ、どうして泣いてるの?頼くんがいちばん後悔したことは、なに…?」


「っ、いちばん後悔したのは……、カンナを手放しちゃったこと……っ」



ゆっくり、抱きしめる。


いつもいつもわたしが泣いて、頼くんに甘えてばかりいたから、今度はわたしの番。


だから泣いてたんだね。

ここでひとり、あなたはきっと、野球を手放した頃から泣いていたんだろう。



「わたしたちはまるっとセットって言ったでしょ…?だからどんなに頼くんがポイッてしても、磁石にくっつく砂鉄みたいに貼り付くのわたし…!」



ずっとそばにいたい。
この人のそばに、ずっと。


たぶん、これが愛ってやつだ。


キミが笑顔になるなら、キミを笑顔にできるなら、わたしは男の子になることだって躊躇わないし、伸ばしてた髪も切れる。