「……あれ、琥珀とデートじゃなかった?」



頼くんがひとりになりたいとき、たまに来ると教えてもらった展望台。

優しすぎる彼には息抜きが必要だから、この隠れスポットでもある展望台から景色をぼうっと見るんだって。


でも今はカンナがいるからそんな必要はなくなった───って、言ってくれてたね頼くん。



「……より、くん」



すぐに向かいたかったけれど、数メートル前のところで足がゆっくり止まってしまった理由。



「あ…、俺、それそろ帰らなきゃ」


「頼くん…」



泣いた……の?


赤く充血している目、まだ潤んでいる瞳。

この距離でも分かるそれは、確実に少し前まで泣いていた人の顔だった。



「頼くん…っ」


「……なに」


「頼くんっ、頼くんっ」



思わず駆け寄ってぎゅうっと抱きつくと、そっけない返事をされながらも離されはしなかった。

「カンナチャン」と呼ばれないことが、ちょっとだけ寂しいくらい。


でも今のわたしはもう、頼くんさえいればいい。