今日、この場所で。
わたしは何度琥珀くんと頼くんを間違えただろう。
ねえねえ頼くんって、何度言ってしまっただろう。
そんな君だって、花屋の前を通ったとき。
紫苑(しおん)の花をずっと見つめていたね。
「これからも、この先も、琥珀くんは琥珀くんにしかないもの、たくさん持ってるよ。
ちなみに俺っ、琥珀くんのお父さんの名前ぜんぜん知らないし、曲も聴いたことない!ほんと申し訳ないんだけどっ」
「……ふっ、…ははっ、あははっ!」
そんなふうに笑う人だったんだね。
そんなふうに笑える人だったんだね。
わたしの前には、有名作曲家の息子ではなく。
蘭 琥珀という、人とのコミュニケーションが世紀末だけど、人よりちょっとだけ天才肌なクラスメイトがいる。
「じゃあ郡さんはずっと…、僕自身を見てくれてた…?有名作曲家の息子じゃなく、僕という存在を」
「そんなの当たり前じゃん!きっと頼くんもムツミも……シオンさんも。Ark.のみんなは琥珀くんにしかないものを見つめてたから、あんなにも素敵なバンドだったんだよ」