「本当は今も頼は僕のことを恨んでるはずなのに。…幼なじみだからって、仲良くしてくれる」


「はははっ、それはなーい!」


「…え…?」



ショッピングモール内の屋上テラス。

足を止めたわたしはクルッと、笑顔で琥珀くんに振り返った。



「頼くんの愛って、めちゃくちゃでかいんだよ。幼なじみだから琥珀くんと仲良くしてるって、そんなわけ!」


「…そんなわけあるんだ。あいつは僕のためにギターを始めて、僕のためにArk.を結成してくれたんだから」


「うん。でも、琥珀くんも志音さんのためだったんでしょ?」



琥珀くんの曲はすべて、彼女に向けたラブレター。

不器用でまっすぐで、ちょっとだけ大人ぶった、そんなラブレター。


きっとわたしに対しても思うところがあったのだろう。


動揺しながら申し訳なさそうに、琥珀くんは視線を落とした。



「その気持ち、たぶんいちばん分かってるのも頼くんだよ」



おかしいね、笑っちゃうね。

こんなにも琥珀くんとふたりだけで、念願だったデートができてるのに。


結局は頼くんのことなんだから。

ここにいない頼くんの話ばっかしちゃってる。