「僕自身はバンドを本格的にやるつもりは無かったんだ。将来は父さんと同じ作曲家になるつもりだったから、曲を作って誰かに提供するくらいで。でも……頼が、」
「…頼くんが…?」
「父親とまったく同じ形で名前を残したってつまらないって。僕には僕にしか出せない色があるんだから……僕がたくさんの色を持ってる絵の具だとしたら、頼はそれを広げる筆になるって言ってくれたんだ」
なんとも頼くんらしい。
主役にもなれる人なのに、あえて飾る側に立つ選択をするのが頼くんだ。
そんな彼の言葉は、すごく安心があって。
根拠も何もない自信のはずなのに、本当にそうできちゃうんじゃないのって嬉しくなる魔法がかけられている。
「でも僕は、最低なことをした。自分が欲しかったもののためだけに……頼のことを利用した」
ボーカル脱退、Ark.解散、メンバーの不仲。
調べれば調べるほど、ネット上には今もなお憶測が飛び交っている。
琥珀くんには琥珀くんの思うところがあって、頼くんには頼くんの伝わらなかった優しさがあったんだろう。