「転校、するの」


「…うん」


「もとの学校?」


「…うん」



あの銀髪の神様と一緒に帰ってるんだよわたし。

いつだって、今すぐにでも、ずっとずっと返したかったパーカーを渡すことができる。



「俺ね、琥珀くん。ほんとうは神藤学院を廃校にしないために…来てたんだ」


「…親の命令?」


「…最初はそうだけど、途中からは俺が選んだの」



戻りたくない。
できることなら卒業までいたい。

それは、この高校が楽しすぎたから。



「……すごいね。僕と正反対だ」


「…正反対って?」


「僕も親の命令でずっとやってきたけど…、ぜんぶダメにした」



少しだけ、速度を落とした。

自然なままに琥珀くんの隣を歩く。



「本当に大事にしなくちゃいけないものを……ダメにした」



なにを大事にしたかったの?

琥珀くんが本当に大事にしたかったものは、なに…?



「…前は、ごめん」


「いやだ」


「…………」