「じゃあホームルーム始めるぞー。……って、不思議なこともあるもんだな」
わたしの隣を見て、それから彼を見た斎賀先生。
「頼がいなくてアララギが揃ってる」と物珍しそうに付け足した。
琥珀くんの顔を見たのも、あの日以来。
わたしはなるべく見ないようにした。
頼くん、どこにいるの頼くん。
勝手なことばっかしちゃったのはわたしだけど、会いたいよ。
顔が見たい。
ガラガラガラ───、
そのとき開いた、教室のドア。
「…セーフ?」
「おう。ギリギリな」
「よかった。ちょっと車に轢かれそうな妊婦さん助けちゃってた」
「リアルでその理由聞いたの初めてだぞ」
頼くんだ……。
変わらない頼くん。
わたしの心はホッとした気持ちと、泣きたい気持ちと、今にでも彼に抱きつきたい気持ちで溢れた。
「おはよ、カンナ」
「おっ、おはよう!!頼くん俺っ、復活したよ…!あのねっ、ずっと頼くんに───」
「あとでね。ホームルーム始められないってさ」
「あっ…、…うん」