「女の子なのに……いつも、頑張って。僕がどんなに冷たい態度をしても、笑って、名前を呼んでくれる。僕の曲を完璧に覚えて歌ってくれた。そんなの……神様でしょ」
「……そんな神様をさ、泣かせてどーすんの」
「だって郡さんは……強いから」
ドガッッッ───!!
俺に殴られることなんかとっくに覚悟していたんだろう。
琥珀は血が垂れた唇の端を拭って、息が上がる俺を冷静に見上げてきた。
「強いわけっ、ないだろ……!!!」
女の子なんだよ、あいつは女の子。
シュークリームだって体育祭だって、夏休みだって、いつだって女の子だった。
不器用ながらにもお前に近づきたくて、それでも食らうのはいつも自分で。
男だから、男だから、そんなものを無理やりにも口癖にして、我慢ばかりの毎日を生きていた。
「依存なんかするなよ琥珀。カンナは、お前が依存していい人間じゃない」
「……知ってる」
お前の曲は、悔しいくらいに完璧だ。
お前の曲は、悔しいくらいに完成されている。