でもきっと、たぶん、嬉しくもあったんだろう。
初めてだもんね、カンナ。
琥珀が嘘でもお前のことを見て、お前ことを考えたのって。
だから、遅いって、泣いたんだよね。
嘘でも良かったんだろ?
あのときのお前からすれば、嘘でも琥珀に優しくされるだけで。
「…ふざけんなよ」
「っ…!」
俺は琥珀の胸ぐらを掴んだ。
どれだけ、どれだけ俺があいつの涙を見てきたと思ってんだよ。
お前に冷たくあしらわれて、バッサリ断られ続けて、初恋の相手に女として見られることもできずに、叶わずに。
男として我慢して表面では泣かないようにして、なのに男に襲われそうになったり。
それでも、それでも琥珀のことをずっと考えてたんだよカンナは。
「お前から見たカンナって、なんなの?」
「───…かみ、さま」
「………」
同じことを考えているふたりに、もしかすると俺が邪魔だったんじゃないかって。
そんなことを一瞬でも思ってしまった。