「僕を選んでって言った」


「…へえ。またなんで今さら」


「志音のため」



おまえってさ、ほんと迷わないよね。


言葉に出すこと、普通であれば躊躇うだろ。

これを言うと相手を傷つけてしまうんじゃないか、とかさ。


そーいうの考えてから発言するよ俺は。


でもお前はいつだってこんなスタンスだから、優しさをあげている俺が馬鹿みたいに思えてくる。



「志音のため…?志音のために、なんでお前がカンナに近づくんだよ」



おかしいでしょ。

ターゲット間違えてるよ琥珀。



「志音がずっと好きなのは……頼だから」


「………」


「僕、見たんだ。前にここでふたりが話してたの」



やっぱりだ。

そこの木陰から覗いてたのは、やっぱりお前だったんだ。

ほんと変わらないね琥珀。



「俺は断ったし、この先も志音を好きになることはない。…だから、お前がカンナに今さら歩み寄った理由が分からないんだよまだ」