「さすがは王子様の休憩所だ……」



男子生徒になって校門をくぐると、まだ咲きかけの藤の花がアーチとなって迎え入れてくれる。

お城のような清潔感、キラキラ輝く噴水もあったりして、廃校寸前だなんて嘘でも思えない。


そしてすれ違う生徒は誰をどう見ても、イケメンしか存在しないということ。


爽やか系からアイドル系、ビジュアル系にインテリ系。

なかにはガテン系まで。


様々な種類のイケメンという名のイケメンたちが制服姿で生活していて、なんというか……逆につらい。



「なあ、お前ほんとに甘彩に行くの?」


「まーな。そのつもり」



と、そばにいた生徒たちの会話。

わたしはそっと聞き耳を立てる。



「ここだけの話、実はスカウト受けたんだよ。向こうのほうが設備も充実してるっぽいし、何より共学で寮生活だぜ?」



引き抜きだ……。
それを世間では引き抜きと言うのだ。

むうう、おのれ甘彩学院め……!