「俺から言えることはさ、…琥珀をもっと見てやってよってことくらい」



あいつの一途さは、見方を変えれば凄いことだ。俺を切り捨ててまでも志音を選んだ。


志音より前に出会った俺を切り捨ててまで。


カンナを泣かせてまで、志音を選んだ。

そして俺も、志音を泣かせてまでカンナを選ぶ。



「私がっ、Ark.を脱退して世界を選んだから…?それで解散にまで追い込んで…、
頼と琥珀の関係も壊して…っ、だから私のこと、恨んでる……?」


「……恨んでないよ。恨みたくもない。俺の愛、けっこーでかいよ」



もう、いいんだ。
俺、また琥珀とキャッチボールできたから。

あいつから誘ってくれて、体育祭でバッテリー組めた。


それだけでいいんだよ、もう。



「───あ、ごめんねカンナ。急なんだけど今からそっち行っていい?」


『えっ、いま!?』


「うん、5分でいいから。キスしたい」


『っ…!ふへへ、ひゃーっ、えへへへ~』


「…カンナチャン、これ直りそ?」


『ぜんぜんダメそう!』



将来の夢はプロ野球選手。

いつか165キロを出して、日本一のピッチャーになること。


日が暮れるまで公園で練習していた過去の俺へ。


叶えられなかった今だけど、大好きな女の子に出会えたよ───と、笑顔を見せた。