ピッチャーやってて、野球クラブのなかでも期待されてて。

ここでいつもひとり、壁とキャッチボールしていた。


そこで琥珀と出会ってから俺の人生は音楽の道へルート変更。



「でも…、カンナに出会えなかったんだよね」



俺が野球の道に行ってたら、琥珀のためにギターを持たなかったら、俺はカンナに出会えなかった。

そもそも神藤学院に通ってなかったし、他の女と付き合ってしまっていたかもしれない。



「だから……良かったのかも」



たとえお前は、志音のためだけに俺を利用したに過ぎなかったとしても。

俺は後悔はない。後悔はしない。
ぜんぶ、俺が選んだ道だ。


ね、格好いいでしょ俺───と、白球を手放して腰を上げたときだった。



「頼……!」


「……志音……?え…、ここアメリカ?」


「よかった…っ、会えたわ…!」



なぜかアメリカにいるはずの幼なじみが登場した。

息を切らして、まるでずっと俺を探していたかのような面持ち。