でも、無事に返せるかもしれないという期待は持っていて。

それは、この窓からも見える先に建つ立派な学校。



「……生徒、だよね」



制服、同じだったもんね。

今もわたしの部屋に掛けられている男子高校生のものと。


神藤学院の生徒ならば、数日後に会えるかもしれない。

あのときのお礼を言って、パーカーを返して、名前を聞けるかもしれない。



「いい匂いするーっ」



洗濯したはずなのに消えていないシトラス。

くんくん、すんすん、すりすり。
ぼふっと、顔を埋めたところで。



「………」



わたしはたぶん変態なんだと、気づく。


でも確かに格好よかった。

背も高くてスタイルも良かったし、マスクをしてたけれど整っている顔立ちだということは見えた。



「あ~~っ!!転校初日で遅刻とかありえないよわたしっ!!」



そしてアホやらかした、当日の朝。


春休み気分が抜けずに放送されていたドラマを最後まで見てしまい、案の定、寝坊の助。