ただ、いつだって周りと一線を引いていた蘭 琥珀が、初めて本当を見せてくれたような気がしたから。
(こんなの……初めてだよ)
カラオケなんかとは比べ物にならない。
音、重圧、みんなが口ずさむ一体感。
わたしに彼らが合わせてくれて、不安になったときは演奏しながら近くに来てくれる。
暗闇のなか、ギター担当の彼に笑いかけると、お面の隙間から同じように返された気さえも。
「ソロきたーーーー!!!」
「かっけええええっ!!!」
2曲目、Cメロから続くラスサビの間奏に組み込まれたそれぞれのソロパート。
まずはムツミのドラム。
普段はうるさくて賑やかなクラスメイトが、頭を振って腕を振って足でリズムを取って、全身でビートを刻んでいた。
そこにドラムと並んだリズム隊であるベースが合わさり、音に厚みが加わったと思えばベースソロへと移行してゆく。