『琥珀、どう?俺とムツミはこんな考えだよ』
『……僕の曲は、僕のものだ。だから僕が決める』
『…まだそんなこと言ってんの?』
『頼…!!』
琥珀くんに詰め寄った頼くんがどんな顔をしているのか、わたしの場所からは見えなかった。
『いいんだよ、お前がたとえ俺たちを道具としか思ってなかったとしても。俺だってカンナのためにArk.になるだけだよ』
『だから、言ってる。僕が決めるって』
『だからっ、』
『だから!!!』
『っ、』
声が上がって、また被せるように上がって。
ビクッッとわたしの肩が跳ねて。
頼くんの先、透き通るような彼の目はわたしのことを見つめてきていた。
『だから……歌って欲しい。郡さんに』
君にならいいよ───と、言われたみたいだった。
カラオケ経験はある、しかしカラオケ経験しかない。
ステージに立ってもリコーダーを吹いていたような女だ。
そんな女に、ボーカルをやって欲しいと。