『音楽だけじゃん…!海の先にもっ、空の先にも届けられるのって!!』
シオンさん、必ず見てくれるよ琥珀くん。
今日の出来事はもしかするとニュースに取り上げられるかもしれない。
わたし、Ark.の曲を聞いたとき。
直感で感じた気持ちは、これラブソングだ……、だった。
小刻みで繊細な激しいロック調、詞もキラキラしていなくて、“ボク”という白黒な存在がこの世界の虚無感を歌っているような。
でも。
誰かから誰かへと言葉にできない想いを届けたラブソングだって思ったんだ。
『伴奏だけでもいいんじゃねーの』
そのうしろ、なぜかムツミはドラムスティックを手にしていて。
くるくる回して、手首の体操をし始めて、少し埃が被った狐のお面にふーっと息を吹きかけていた。
『3人だってできることはあんだろ。その…スターチス?って奴らも混ぜて、なおさら今日だけなら新しい形でもいい気がするんだよ』
ただ、そうは言ってはいたが。
最終的な決定権はムツミでも頼くんでもなかった。
ずっと黙り込んだままの、神様。