《今年世界デビューを果たし、異例のスピードで人気絶頂中のSionさん!今回は彼女の素顔に密着してみました!》



テレビを付ければ必ずと言っていいほど聞こえてくる名前。

それまでは知らなかったから、聞いたところで頭には入らなかった。


でも、ぜんぶ分かってしまった今。
ただ、わたしだって変わっている。



「もしもし頼くん!あはっ、なんかね、頼くん何してるかなーって思って!」



違うものに目を向けてみることで、もっと素敵なものを見つけられるようにもなった。

スマホ先の甘い声、『カンナチャン』と、ふたりだけの秘密の会話。



「頼くん、俺ね、もっと頼くんのこと知りたい」


『…そこは“わたし”じゃないの?』


「ま、迷ったけど…!なんか……、恥ずかしい…から」


『……まーたそーやってカワイーこと言っちゃって』



前、頼くんに初めてギターを教えてもらったとき。

彼のギターケースのポケットに、とあるものが見えたんだ。


まだ確信はしてない。
たまたまそう見えただけかもしれない。


────どこかで見覚えのある、狐のお面。