「単純に───…この子欲しいなって思っちゃってさ」



こんなアホの子が…?

隠し事なんか下手っぴで、頼くんの手をいつも患(わずら)わせてるようなわたしだよ…?


欲しいって、どーいう……?


今もう頼くんのお膝のなか、腕のなかにいるのに。



「1年だけは寂しい。できればずっといて欲しい。けど……来年は女の子としてのカンナに会えるなら、それもそれで楽しみかも」



この人は会ってくれるつもりなんだ。

わたしが男じゃなくなっても仲良くしてくれるつもりなんだ。


むしろ、男じゃないわたしを楽しみにしてくれてもいる。



「…なんで…そんな顔、してるの…?」



さっきからニヤニヤ、ではないけれど。

すごく気分が良さそうな顔をしている。



「んー。なんか、やっと泣いてくれたのが嬉しいのかも。だから俺…この涙であればあいつを怒らないで済みそう」


「…あいつって…だれ?」


「さあね」



気になって眉を寄せると、クスっと微笑んで誤魔化される。