「頼くん……どこ行くの」



そんなわたしは、頼くんに引かれるまま校舎に逆戻りだった。


今のわたしは小さな子供が手にする紐で繋がれた風船。

ふわふわ、ゆらゆら。
意識なんかなく、連れられるまま。



「お、前に使ってた奴エアコン付けっぱ。ラッキー」



【studio.C】と表記された一室。

わたしと頼くんの身体が室内に収まると、彼は内側から鍵を施錠してしまった。


このバンドコースが使うスタジオには、転校してきたばかりの頃にムツミに少し案内された程度。


防音になっていて、録音機材や楽器が揃えられていることは知っていた。



「ちょうどよかった。ほら最近の俺、クラスの奴らのギター練習に付き合ってるから」



そう言いながら彼が出してきたものは、黒いギターケースだった。

こなれた手つきで取り出しては、チューナーをアンプに繋げてボリューム調節している姿から見て、それは彼が持参しているギターなのだろう。



「体育祭練習させるために取り付けた約束、あっただろ?あれ本当にやってやってんの俺」