「───より……?っ…!頼じゃない…!!」



阻んでいた壁をパリンッと割ってまで、こちらに近づいてくる女性。

わたしの隣に立っていた頼くんに気づくと、嬉しそうに名前を呼んで走ってきた。


それがかつての、琥珀くんを前にしたわたしに似ているような気もして。


おこがましいけれど、なぜか、そんな気がした。



「会いたかったの…!元気そうで嬉しいわ…!」


「…久しぶり。志音もすごいね、毎日ニュースで見るよ俺」


「ふふっ、おかげさまで充実してるわ」



琥珀くんとシオンさんが知り合いならば、琥珀くんと幼なじみの頼くんも顔見知りであることは必然だ。


珍しいことじゃない。

むしろシオンさんから見たわたしが珍しいくらいだ。



「頼のお友達…?」


「…友達っていうか、それ以上かな」



帰ろうとしたのに、ぐっと肩を押さえてくる。

さっき息を切らして戻ってくるほど近寄らせないようにしてきたのに、今度は帰らせてくれない。


ほら出た、頼くんの分からないところ。


ここでもわたしの男としての部分を試そうとしているのだろうか。