こいつはさっき、わたしの前にしゃがんできた男だ。
どうしよう、足…、ふるえる。
カタカタカタと強気な意識とは逆方向。
そもそもぶつかったのはなーちんじゃない。
そいつらがわざとぶつかってきたところ、わたしには見えていた。
「っ、わああああーーー!!!」
「!?黙れって馬鹿…っ!!」
「わあああーーーっ!!ああああーーーっ!!うわあああーーー!!!」
「おいっ、早くそいつ黙らせろよ…!!」
こういうとき、叫ぶといいんだって。
わりと人間の叫び声って響くらしいから、誰かが気づいてくれるかもしれない。
だからわたしは無我夢中になって叫んだ。
これで声が枯れてしまってもいいと思うくらい、叫んだ。
「あ、もしもし警察ですか?今、橋の下で女子高生ふたりが不良に絡まれてて───」
そんな願いは、届いた。
トンネルの入り口にて、スマートフォンを耳に当てて電話をかけてくれた通行人がひとり。