「先生、あのさ、友達だと思ってた男がさ……、キ、キスしてくる感情ってさ……なに…?」



放課後、日直の学級日誌を届けに来たついで。

ゆっくりと言葉を並べたわたしに、コーヒーを飲もうとしていたクールハンサムはピクリとこめかみを動かした。



「………とうとうやられたか」


「……うん」


「……誰にだ」


「…それは……言えないけども…」


「…まあ、大体は予想できるけどな」



この男しかいないと思った。

ムツミに言ってもあれだし、琥珀くんに言ってもあれだし、他のクラスメイトに言ってもあれだし。


…となると、恋愛経験も人生経験も豊富そうな斎賀先生にしか。



「と、友達っていう感情だけで……してくる、ってのは、ある…?」


「それだけはない」


「えっ」


「なんで友達に、わざわざ男友達に、罰ゲームでもねえのにキスするんだよ」



……確かにだ。

そう考えるほうが納得できない部分が出てくる。