「…俺…、たぶん、頼くんとは経験値が違いすぎるから……、わかんないよ…」
「そうじゃないよ、どう考えたって」
「…え?」
「たぶんお前が不安に思ってることと正反対。俺が思ってることは」
ちがうって、真っ向から否定してくる。
彼にとってあれは当たり前のことで、誰とでもできる、とか。
そう思っていたわたしの思考回路を読めてしまったみたいに。
「…頼くんは、優しいもんね」
可哀想に映ったのかもしれない。
夏休みにあんな目に遭って、琥珀くんにも近づけなくて、それでも男として生きようとしてるわたしが。
可哀想に映ってしまって、慰めてくれた。
そう説明することが今のところの自分のなかでの正解だった。
だって頼くんも、好きなひと、いるんだもんね……。
「早く気づけ、アホの子」
と、わたしの隣で彼がつぶやいていたなんて知らずに。
わたしの毎日は銀髪の神様じゃなく、黒髪の優しい人が占める割合のほうが圧倒的に多くなった。