ここは男子校なんだから。
わたしも男で、頼くんも男なんだから。


それにあなたにも好きな人は居るらしいから。

こんなことしちゃダメなんじゃないの、どーなの。うい、うい。



「俺は別に誤解されてもいーよ?」


「っ、うっ、うああああーーーっ」


「ごめんってカンナ。わかった、ちょっとだけ離れるから。ほんとちょっとだけど」


「それ2ミリ…!!」



どろどろなのだ。
それはもう、どろどろ。

どろどろに甘やかして、どろどろに可愛がって。


濃厚なトマトジュースのような。


まるでわたしの男の子になれない部分を試してくるみたいに。



「…花火、楽しかったよね」


「っ…、た、楽しかった…」


「線香花火は結局のところ俺が勝ったんだっけ?」


「お、俺だよっ」


「…だいせーかい」



ふたりだけの思い出ができた。
わたしたちしか知らない出来事が増えた。

彼はどういうつもりで話題に出したのかは分からないけれど、あの日のことは忘れもしない。