彼がわたしに対して実行してくる“当たり前”は、ひとつやふたつじゃないのだ。
肩をぶつけてくる、目を合わせてくる、わたしが視線を外すと甘く微笑んでくる。
基本的に距離が前よりもずっとずっと近くなった気がするし…。
「いや、すごいって。朝も忙しいし、なにより一人暮らしだし。それにさ、卵焼きとウインナーって家庭的で俺は好き」
「……お、おう…」
そしてわたしも、おかしくなった。
頼くんとのまともな会話方法をど忘れしてしまった。
今までどんなふうに話してたのか、すっかり思い出せないくらい。
「…ね、カンナ」
彼がこういう声を出すとき。
カンナチャン───と、言われているような気持ちになる。
つまりは女の子扱いしてくれているのだ。
それがなんとも居たたまれなくて、胸を熱くさせて、心をざわつかせて。
「なっ、なななんだよもうっ」
「…ふっ、そんなガッチガチになんないでって」
「変な誤解されたら困るだろっ!」