「先生、俺さいきん視力が落ちてきてよく見えなくて」
「そうか。なら前の席の奴と交換するか」
「えーっと、できれば2列目で」
「…希望なんざ聞いてねえよ」
2学期が始まった初日、行われた席替え。
神様のお隣はおさらばということになり、わたしは窓側2列目となった。
「んなら、サチヤが前回の席とあんま変わらねえから交換でいいか」
「あー…、いや、もうちょっと左かな」
「……ずいぶんとわがままだな、頼」
「そういうお年頃なもんで」
最初に引いたくじ引きから大きな移動をしつづけている生徒、ひとり。
最初は廊下側の5列目だったはずが、じりじりと近づいてきているような気がする。
……そう、わたしに。
「やっぱ窓が見えたほうがいいなって。ほら、明るいと目にも優しいでしょ?」
「…ってことはカンナ、お前と交換だな。おまえ後ろがいいって言ってたもんな」
「あ、それだけはダメ。惜しい、惜しいけどダメ」
「……正直に言ったら聞いてやるぞ」
「え、ほんと?男に二言とかナシだからね先生。じゃあ……カンナの隣で」