そんな小さな期待はしていたけれど、ここでうなずかれて、完全に終わろうとも思ったんだ。


でも、頼くんは。

わたしがまったく予想もしていなかった言葉を伝えてきた。




「悪いことは言わないから、───…俺にしときな」




そのあと。

彼はゆっくりとわたしから身体を離して、代わりに手を取って、交わした会話は少なくて。


「頼くん」ってわたしが名前を呼ぶと、返事はないのに、初めて見る顔で見つめてくれて。



「すみません俺まで送ってもらっちゃって…」


「いいのいいの。いつもお世話になってるお友達だもの~。カンナ、花火は楽しかった?」


「……うん」



公園を出る前、ちょうど駐車場からは視角になる場所で。

「今日はありがとう」と、改めてお礼を言ったわたしに。


少しだけ屈んだ彼がスッと顔を近づけてきたと思えば、ふわりと、頬に唇を付けてきた。



『ヘアピン、かわいーね』



そう言って、1度だけじゃなく2度も頬っぺにキスをしてきたこと。


それは、それは。

わたしたちだけの、ひみつ───。