殴っちゃってたもんね、頼くん。
あんなに怒ってる姿、わたしも想像すらできなかった。
まさか殴るの?って、事情の知らない人間の誰もが思ったはずだ。
「…俺、だいじょーぶだよ。頼くんがいてくれるから……これからも頑張れるよ」
男として、つぎ会ったときからも頑張るよ。
という意味を込めて一人称を変えた。
楽しいんだよ、学校。
大変なことばかりだけど、でも楽しい。
男として過ごす自分のことも最近になって好きになってきて。
他コースのほうでも声をかけてくれる生徒が少しずつ増えていた。
「あっ、そうだ…!ねえ頼くん、頼くんは彼女さんとかいるの?」
「……なんで?」
「わたしの友達がね、聞いておいて欲しいって!」
なーちんに頼まれちゃったから。
ちょうど良い機会だ、聞いておこう。
「いない。けど、……彼女だったらいいなって子なら、できた」
「えっ、そうなの…!?」
きっとその子はすごく幸せだ。
こんなにも優しくて、わたしの自慢の友達に想われてるってことだもん。