「……もしかして…、俺の声だけ聞こえてない…?なんでっ、頼くん!しっかりして頼くん…!!」
「…ふっ、だからなんでそーなんの」
「あっ、しゃべった…!」
ホッとしていると、頼くんは小さくこぼした。
「……女の子が“俺”は無理あるんじゃないの」
「えっ、でも俺いつもこうだし…」
「“女の子が”、俺は、無理あるんじゃないの」
その部分を、強調してくる。
今のわたしの姿は男なんかじゃないって。
男がワンピースは着ないって。
だから“俺”も男口調もおかしいって。
「わたし…?」
「……そっちのが合うよ、やっぱ」
こっち持ってくれる?と、花火を渡してきた声。
それすらいつもの頼くんを狂わせてくる音色だった。
でも、優しさはやっぱり同じだ。
「へーき?足元暗いし、段差があったりするかも」
「ぜんぜん!走れそう!」
「…俺が怖いんだってば」
「っ!」
掴まれた手の力だって、初めてのものに感じてしまう。
そのままゆっくりと繋いでくるから、断る方法のほうが分からなくて笑顔を返した。