「…着替える必要、ないじゃん」


「え?」


「だってお前は女の子なんだから」



そ、そうなんだけど…。

こんなに真っ正面から女の子扱いしてくるの、初めてだよ頼くん。


そんな頼くんはカジュアルかつオシャレな上下セットアップ、仕上げにアクセサリー。

たったそれだけで様になってしまうのはもう宿命だろう。



「…じゃあ花火、行こっか」


「あっ、うん」



地面に置かれていたバケツと花火セット。

両方手にした彼を見て、胸がきゅううと痛くなった。


わたしのために、わたしとするために、ここまで準備してくれたんだって。


もしかしたら前の出来事を中和させたくて、元気づけようとしてくれているのかもしれない。



「俺っ、バケツ持つよ!」


「………」


「頼くんひとりじゃ大変だろ?俺に任せてっ」


「………」



どうしてか返事がない。

明らかに聞こえてるはずが、聞こえていないふりでもされているのだろうか。


もしかして耳栓してる…?と覗いてみれば、バチッと重なる目。