ほら、お母さんも焦ってない。

いい友達に恵まれて良かったと、心の底から安心している顔をしていた。



「頼くんお待たせ!」



お母さんは駐車場で待ってくれているらしく、20時までには戻ると約束をして、車から出る。


公園の入り口、街灯の下。

しゃがんで何かを探しているらしい男子高校生へと駆け寄った。



「頼くん?なにか落とした?」


「───お、ミヤマクワガタゲット~。カンナ、おまえクワガタとかって………、」


「クワガタ!?触ったことないよ俺っ」



隣にしゃがみかけると、クワガタを手にした頼くんは振り向きながら固まってしまった。

そしてスッと、クワガタを逃がしてしまう。



「え!もっと見たかったのに…!なんで離しちゃうの頼くんっ」


「……おまえ、さ。その格好、」


「あっ、昼間に前の学校の友達と会ってね。そのまま着替えるの忘れてて!」



夜だからたぶん大丈夫だよね…?

この公園は中間地点だし、今も人は見当たらないし。

最悪の場合は頼くんの背中にでも隠れてやり過ごすつもりだ。