頼くん、よりくん、頼くん頼くん。

本人さんの膝の上、わたしは言われたとおりに連呼した。



「どう?忘れた?」



忘れたって…なにを……?

聞く代わりにじっと合わせると、人の心を惑わしてくる瞳が伸びた。



「琥珀のこと」


「っ…」



忘れるわけ、ない。

たったの今なんだよ。
この教室でね、わたしは振られたの。



「って、忘れるはさすがに無理か。んじゃあ……俺で塗り替えれた?」


「……うん」


「はは、今のは言わせたな完全に」



でも、これだけは本当。

頼くんが居てくれて良かった。



「よりくん、焼き肉たべたい」


「……俺より食い気」


「うん」


「俺はカンナだってのにね?」


「……うん?」


「さっすがアホの子。…好きなお肉は?」


「せせり」


「……マニアックじゃん」



それから向かった焼肉屋さんには、わたしたちよりも先に到着していた琥珀くん。


ありがとう頼くん。

頼くんのおかげでいつもどおり笑えそうかも。



「お待たせみんなっ、本日の主役が遅れて登場しました!!」


「ははっ!自分で言うなっつーの!!」



すごくほろ苦かったね。

でも甘さで終わったような、そんな体育祭だった。