「ムツミにもこんなことしてるの…?」


「そーそー」


「こうやって膝に乗せて…?」


「そーそー」


「ええっ、きしょくわる!」


「はっ、言うね」



適当な返事ばっかしてるから。

いつもムツミが隣に来るだけで「近いキモい」って言ってる頼くんのくせに。



「おまえスライダー凄かったよ。今まででいちばんキレてた」


「……うん」


「俺のピッチングどうだった?格好よかった?」


「……うん」


「…俺のこと好き?」


「……うん」



わざと似たような返事をすると、甘く微笑んだ彼は頬を寄せてきた。

すりっと、わたしの流れていない涙を拭うように触れてくる。


それだけで小さな女の子にでもなっちゃったような気分になって、頼くんの制服をきゅっと掴んだ。


ぜんぶぜんぶ、わたしが男だからできること。



「どーしたの、カンナチャン」



安心がすごい。
なんだろう、本当に。

ぜんぶを知ってる頼くんにそう呼ばれただけで泣きたくなるんだもん。