違うって言ってるのに。
もうその名前は聞きたくない。

竜英軒に行ったときにはリセットするから。


だから今は、今だけは黙ってて頼くん。

なにか察したとしても、なにも言わないでよ。



「まあ、こーいうときの俺なんだろうけど」



ガタッと立ち上がった頼くん。


スタスタ出て行っちゃうと思っていれば、教室のドアふたつをピシャリと閉めきってしまった。


もう校内に残っている生徒は少ないと思うし、足音も当分してない。

だからそんなことする必要はない……のに。



「でも俺は、自分を犠牲にしてまで格好いい立ち位置を貫くようなさ。そんなよくある良い奴すぎるキャラだけは勘弁だから」



適当な椅子をそばに置いて、そこに座ったかと思えば。



「格好悪くていーし、ズルいこともセコいことも余裕でしていくつもり」


「っ…!」



ぐいっと、腕が引っ張られる。

全身ごと向かってしまうと、それが目的だったかのようにわたしの身体がふわりと浮いた。


最終的に頼くんの膝のうえ状態が完成。


わたしをお姫様抱っこしたまま座ったような、そんな体勢だった。