「あ、いたいた。カンナ、俺もそろそろ向かうつもりだけど───、……」
授業中でもここまでしっかりとした着席なんかしたことない。
黒板をまっすぐ見すえて、姿勢もピンと伸ばして。
ただ震える唇の代わりに、ぎゅうっと膝に乗せたこぶしを握っていた。
「おっと、女の子がいる」
「……男だから、俺」
「ふうん。そんな顔はね、たぶん男にはできないと思うよ?」
わたしの顔を覗きこんだ頼くんは、前の席の椅子に座った。
「頼くん…、俺、笑えてる……?」
「ああ、笑ってたんだそれ。ごめん真逆に見えた」
「……笑ってるんだよ俺」
おれ、俺、おれ。
自分で言うことが何よりの叱責だ。
完全に女だった。
琥珀くんに対してうなずいたわたしは、スカートを履いていた女の子。
不良たちに押し返されて泥へと尻もちを付いてた、女の子。
「琥珀でしょ」
「……ちがうよ」
「なんて言われた?」