「……おれ、は……、男、だよ」


「……うん」



苦しい。
どうしよう、息が吸えない。

ぐっと引き締めていないと目から溢れてきちゃいそう。


せめて、せめて笑顔を見せるために人生でいちばん頑張った。



「…竜英軒、だっけ。少し遅れるかもだけど行くから」


「あっ、うん!待ってる!」



わたし、行けないかもしれない……。


どうしよう頼くん。
よりくん、頼くん、よりくん。


早く来てよ。

前みたいに頼くんだけはわたしを慰めてくれなくちゃ。



「いっぱい食べて!時間制限ナシの食べ放題だからっ」


「…どうも。…じゃあ」


「おうっ!またあとで!」



線を引いておきたかったんだろう。

これ以上踏み込まれる前に、わたしが踏み込む土台を消しておきたかったんだろう。


もうこちらの世界は完結していますよって。

わたしが加わることで展開される物語は最初からありませんよ、と。


ああ、また、背中だ───…。