「カンナーーー!」


「ちょっと頼、」



爽やかな風が吹いてくる窓から大きく名前を呼ぶと。

グラウンドの中心、ムツミと何やら戯れていた女の子はクルッと振り返る。



「頼くん…!えっ、琥珀くんも!!なんだあーっ、そこに居たなら言ってよーーー!!」


「どおーー?練習は順調ーー?」


「おうっ!ばっちしーーー!!」



ほんっと、あの笑顔ってズルいよね。

男にしては可愛すぎるし、17歳にしては子供っぽくて、俺だけが独り占めしたいとも思わせてくる。



「…琥珀、カンナはたぶんお前のことが好きだよ」



って言ったらどうする───?と、俺は試してみた。

自分では気づいてないっぽいけど、シュークリームだってさ、あんなの普通に女の子じゃん。



「……男に好かれても」


「あー、それは言えてるか」


「…僕は好きな人、いるから」



なるほど、だったら無意識ってことか。

無意識に時間どおり登校して、無意識にキャッチボールに付き合って、無意識に男を“さん呼び”して?


そんな言い訳が許されるなら、俺だって使いたいよそれ。



「ただ、これだけは言っとくけど。もしカンナを泣かせてくれたら俺……おまえを怒るかも」



お前が何よりも恐れ、嫌いだったことだよ。

誰かから怒られること。


強く忠告した俺に、そいつからの返事は無かった───。