『そうそう!うまいじゃん!琥珀くんぜったいキャッチャーの素質あるって!』
『…たのしい』
『でしょ?おれね、ピッチャーやってんの。カーブだけじゃなくスライダーも特訓しててさ!』
『……すごいね、頼くんは』
『琥珀くんもすぐ投げられるようになるよ!』
それから約束した日を作って、ふたりでキャッチボールをするようになった。
琥珀の笑顔が見れたことが俺も嬉しくて、友達になるまで時間はかからなくて。
けど、琥珀は俺とは正反対の世界に生きていたこと。
『琥珀!お前は何をやっているんだ…!!』
『っ、お父さん…』
『歌の練習はどうした?ピアノは?バイオリンも投げ出したらしいな。
こんな泥だらけになって…、俺に恥をかかせるなといつも言っているだろう!!』
『……ごめんなさい』
現れた男によって琥珀が握っていたボールもグローブも、地面に放られてしまった。
そのまま男の手に引っ張られるように帰ってゆく。
その子が近所内でも有名な、近寄りがたい豪邸に住んでいる子だと知ったのは、そのあと。
『琥珀くん!』
『よ、頼くん…』