「僕とは正反対に生きてるなって、思う」
「羨ましいんだ?」
「…わからない」
ほんと、昔から変わってない。
自分の気持ちをすぐ隠すとこ。
隠れた自分の気持ちにすら、こいつは気づかない。
それは自分の意思で生きることをそこまでしていないからだろう。
小さなときからずっと、有名な作曲家である父親の期待に応えなくちゃいけなかった子供でしかなくて。
だから昔から天才肌ではあったけど、人との関わり方はほんと世紀末。
「懐かしいよね、野球。…覚えてる?」
「……覚えてる」
俺はずっと、野球少年だった。
小学生の頃は野球クラブに所属していたくらいで、そんな俺はいつも近所の公園にある壁でピッチング練習。
そのとき木陰から覗いていたのが琥珀。
それが俺たちの出会い。
『いつもここから見てるよね?よかったら一緒にキャッチボールしない?』
『……いや、ぼくは…、できない、から』
『教えてあげるよ!おれ、グローブもふたつ持ってるからさ』
できない、
その理由はふたつあったこと。
単純に野球に触れたことすら無いからという理由と、親が許さないからという理由。
でもそんなこと知らなかった俺は、強引にも琥珀の手を取った。