「まあこれだけは。…俺はこれからもずっと琥珀の幼なじみだから。
たとえ自分にとって優しくなかったからって絶縁するような、そんなガキ臭いことはしないよ」
優しすぎるのがたぶん、俺なんだ。
興味なんか無かった音楽の世界に無理やりにもベクトルを合わせたのだって、ギターを始めたのだって。
─────ぜんぶ琥珀のためだった。
「やっぱり帰ってなかったし」
「…頼、」
「見てるなら参加すればいいってのに」
「……大人数、嫌いだから」
それから数ヶ月経ち、高校2年生になった俺たちの前に。
変わった転校生が現れた。
今も体育祭に向けてグラウンドではしゃいでいる小さな転校生。
を見つめながら窓際に立っている幼なじみの隣、俺は足を止めた。
「あいつのガッツ、ほんと凄いよね。知らないあいだに応援したくなる」
カンナなんでしょ、
お前が数ヶ月前にパーカーをあげた子って。
俺はすごくラッキーでもあって、ズルくもあって、最初に近づいた目的は琥珀に仕返すような気持ちだった。
こいつも少しばかりは気にしている感じがしたから、それより先に俺が奪ってしまいたくなって。
そんな小さな対抗心。