「おまえが作る歌…、好きだったよ俺」
「…っ」
「おまえの曲を演奏することも、俺は好きだった」
お前は、志音のためだけに作っていたんだろうけど。
今も志音に渡すものしか作曲してないんだろうけど。
これからも、お前はそうなんだろうけど。
「……ん?あれ?いつものパーカーは?」
昔から俺がこうして助けてやるんだ。
口下手で人付き合いが大の苦手だった琥珀に、手を差し伸べてやるのが俺だった。
「……面白い子に、出会ったんだ」
「面白い子?」
「…うん。危ない場面でちゃんと叫べる子。その子にあげた」
「……へえ」
初めてだ。
こいつが志音以外の女の話をして、志音以外の女に興味を示しているなんて。
「わりと僕が好きな声、してたから」
「…志音に似てるってこと?」
「ちがう。それともまた違う……声」
お前もかなり良い声してると思うよ俺。
俺とは違って中性的な高い声だ。
だから志音が居なくなった埋め合わせなんか、簡単だと思ってた。
また俺たちは俺たちで新しいArk.を作れると思ってたんだよ。