「もしかしてだけどさ、Ark.なんか作らなきゃ良かったって思ってる?」



そうしなかったら、俺たちの仲がこじれることもなかった。

志音の歌声をメディアに取り上げられることもなく、あいつがアメリカに行くこともなかった。


琥珀の隣には今も志音はいた。



「……ごめん、───っ!!」



さすがにそれは聞き流すことができずに、俺は琥珀の胸ぐらを掴んでいた。



「…やめろよ、それは。そこで認めたら……俺の選択ぜんぶが無駄だったってことにもなるんだよ」



恨みたくないんだよ、俺はArk.を。

お前のことだって恨みたくない。



「頼、僕はたぶん……誰かに依存しなきゃ生きれないような、そんなどうしようもない人間なんだ」



こいつはいつも迷子になった子猫のような目をしている。


そんなに自分を選んで欲しかったのか、志音に。

自分が作った曲を選んで欲しかったんだろ、あいつに。


今日もニュースで見たよ。
大手レコード会社と契約したって。

寂しいんでしょ、どんどん離れて行ってしまうのが。

どんどん自分の手の届かない存在になっていくのが。