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1時間目の授業が終わったとき、友達の矢野麻子が声をかけてきた。
麻子は黒髪ショートカットで、ふくよかな体型をしている。


「ユカリちゃん、大丈夫そうなの?」


大人しいタイプの麻子はユカリへ苦手意識を持っているけれど、保健室から戻ってこないことを心配しているようだ。


「わかんない」


左右に首をフリ、スカートのポケットからスマホを取り出す。
まだ保健室で眠っているかもしれないから、メッセージだけ入れておくつもりだ。


「なんか、ユカリちゃんがいないと教室が静かだよね」


そう言われて休憩時間に入ったのにあまり私語をしている生徒がいないことに気がついた。
みんな自分の席で勉強していたり、勉強している生徒の邪魔にならないような声量で会話している。


「ごめんね。私もうるさくしてたかな?」


ユカリとちゃべっていると楽しくてつい自分の声量がわからなくなってしまう。


「ううん。そうじゃないの。ユカリちゃんの声を聞いてるとこっちまで楽しい気持ちになってたから、ちょっとさみしいなって感じたの」


麻子は顔の前で左右に手を振って説明する。
それならいいんだけれど……。


「ユカリ、たぶん寝てるんだと思う」


メッセージには即座に返信してくるユカリだけれど、今は既読もついていない。


「そっか。早くよくなるといいね」

「うん。そうだよね」