喉が自然とゴクリと音を立てる。
恐る恐る受け取ったおにぎりにはサケとパッケージに書かれていた。
感染前には普通に食べていたおにぎりだ。

これを一口でも食べることができれば、この猛烈な空腹も弱まってくれるだろうか。


「無理はしなくていい。少し口に含む程度で」


圭太の言葉を半分ほど聞いたところで、私はフィルムを剥がしておにぎりを口に入れていた。
瞬間、海苔の芳醇な香りが口の中いっぱいに広がった。
おいしい……。

そう感じたのはほんの一瞬の出来事だった。
次の瞬間には土を口に含んでいるようなひどい不快感を覚えた。
舌の上に広がる米の食感は、へどろのようで、咄嗟に吐き出していた。


「うっ!  げほっげほっ」


吐き出した後も土の香りが残っていて、無理やり水を飲んでそれをごまかす。


「なにこれ、すごくマズイ……」


まるでサケおにぎりの味なんてしなかった。
これは人の食べ物じゃない。


「口に入れただけでダメなのか」