見かねて教室へ飛び込んで声をかける。
男子生徒は自分の喉をかきむしりながらのたうち回っている。
そのせいで上のシャツがまくれ上がり、赤い斑点が出ている皮膚が見えてしまった。


「感染してる!」


思わず声を上げて彼と距離を開けてしまう。
自分もすでに感染しているけれど、条件反射だった。


「空腹に耐えられなかったんだ」


圭太が静かな声で呟いた。
男子生徒はしばらくその場で痙攣を繰り返していたが、やがて怠慢な動きになり、そして完全に止まってしまった。


「嘘でしょ……」


口から泡を吹いて白目をむく男子生徒に恐怖心が湧き起こる。
人肉以外のものを食べたらこんなにもあっさり死んでしまうの?
それじゃ、自衛隊員に連れて行かれたユカリはもう……?


「これはもらっておこう」


男子生徒が手をつけなかったおにぎりを3つ、圭太が手に持った。


「少し、食べてみるか?」


圭太がおにぎりを差し出してくる。